INTERVIEW

Vo/Gt家永によるソロ形態での「merkmal」のリリースから5年。直近でデジタルリリースされていた二部作のEPをコンパイルし、バンドとして初のCD「diode」が5月27日(土)リリース。

求心力のあるソングライティングが光る「瞳」や、積極的なライブ活動で培ったアンサンブルを聴かせる「回転」など、バンドとしての守備範囲の広さを感じさせる全9曲が収録。
新進気鋭のクリエイター・Masahiro Fujitaが手がけるアートワークからも、バンドが次なる扉を開く事を予感させる作品となった。
今回のインタビューでは、Drの田井中が聞き手を担当し、家永には製作時を振り返りながらアルバムのコンセプトや製作手法について話してもらった。


ーー 「anode」、「cathode」と対になる内容のEPを配信し、その2作を組み合わせたCDアルバムを出すという流れになりましたが、コンセプトも含めた青写真はいつ頃できましたか?

2022年の春頃、「anode」の収録曲が固まってきた段階で「今作は歌もの色の強い内容になるので次は少し変わった物を作ろう」というマインドになっていました。2枚が対になるというのも自然な流れで決まりましたね。「anode」のリリース後に「フィジカルで欲しい」という声も聞いていて、秋頃に「在処」の録音に取り掛かりはじめたところで「盤を作る」という意識が固まりました。バンドが始まって3年になるし、そろそろ形になる物を残したいな、と。

ーー 宅録ソロ時代の「merkmal」以来、CDでのリリースは約5年ぶりとなります。

「merkmal」を出した時に店舗やディストロを通じた新たな繋がりが生まれたという実感があって。当時のCDを今でも大事に聞いてくれている人もいるので、しかるべきタイミングでまたフィジカルを出したいとは思っていました。

ーー 君島大空さんは「merkmal」をディスクユニオンで買った、と過去にツイートしていましたね。

ディスクユニオンで言うと今回もリリース告知直後に「うちで扱わせて下さい」と声をかけてくれたり。そういったものも含めてまた配信だけでは見えなかった繋がりが出てくることもあるかなと。

ーー タイトルについてはどこから着想を得ましたか?

特に元ネタは無く、ギターやエフェクターに触れる上で電気回路の用語として陽極・陰極という対になる単語が身近にあったので採用しました。その後CDを作るということになり、「ダイオードになって発光する」という綺麗な流れが生まれて良かったなと思います。

「merkmal」の時もそうでしたが製作が進む過程で当初は想定していなかったコンセプトが立ち現れてくるのは醍醐味でもあります。

ーー ソロ時代のアルバム「merkmal」、 バンドの一作目「losstime」を経ての手応えや心境の変化はどのように今作に反映されましたか?

「losstime」のときはバンドとして初めてのレコーディングだったことや東京に行ってかなりタイトなスケジュールで作ったこともあって、良くも悪くもそれが音に反映されているなと思います。一方で今作は録音を全て大阪のLubLabで行ったので、制作していくうちにスタジオとバンドでの相互理解が深まっていく過程もパッケージされていると思います。

ーー 「diode」の中でも各々の使用機材が変わったりと各々の変化がありますね。では各曲の話に入りましょう。

アンセム

「anode」では最後に収録されていますが、元々昨年のワンマンの1曲目に向けて製作した経緯もあるのでこの位置はしっくり来ています。サビだけの弾き語りデモを広げていく中でマツヤマの結婚報告もあって。そのことも考えながら歌詞を書きました。最初はOfficial髭男dismの「115万キロのフィルム」みたいに映画になぞらえてやってみようか、と映画モチーフを散りばめた歌詞を書いてみたんですがしっくりこなかったのですぐやめました(笑)。

ーー 一度ボツにした歌詞があるんですね。

ほぼ全て書き直しましたが「マクガフィンを〜」のくだりだけは残っています。

マツヤマの奥さんはポルノグラフィティが好きなので「ハネウマライダー」から連想してタンデムだな、とか。あとはマツヤマの書く字はすごく癖が強くて。最終的には本人達が気づかない程度にそういうところも盛り込んだ歌詞になりました。

ーー シンプルで広がりのある曲はそれまでのcolormalには無く、新鮮に感じたのを覚えています。

ド頭のコードがAから始まるのも1曲目にふさわしい幕開け感があるなと。こういうoasisオマージュみたいな曲を自分のディスコグラフィの中で一回はやってみたい、という気持ちはありました。

リアピックアップを使ったカラッとしたギターの音もウチの中では珍しいですね。歌や楽器の録音もスムーズに進んで、曲の持つ自然体なムードが出せたかなと思います。こういう曲はともすれば全体として平坦になりやすいのでフックとしてCメロに転調を入れています。やささくのヒーロー然としたギターフレーズもアクセントになりました。

ーー Cメロの転調は意識的に入れたものだったんですね。自然な形で楽曲にフィットしているなと思います。

一部の論評で見られるような「これだけ転調しているのでスゴい!」みたいな風潮にはノれなくて。それが楽曲を良くする上で機能しているならすごく良いなと思うんですけど、単純に驚かせるための転調であったり、アスリート的な観点での評価の俎上に乗るようなものって耐用年数としてはどうだろうと思っている節はあります。自分の作曲では避けがちなんですが、この曲の中では必然性のあるフックとして入れることができたなと。


22

ーー この曲は「再放送」の流れを汲んでいますね。

まさにそうですね。「再放送」「ゆらゆら」「最大限」あたりは自分がギターを持ったらつい弾いてしまうような手癖からできた曲なんですがこの曲もその例に漏れず。四つ打ちのドラムを流しながら手癖でジャカジャカ弾いていたらサビができました。その流れでリフをつけた状態でTwitterに上げたら好評だったのでフルで完成させて「anode」収録に至りました。

ーー まずサビを作ってから他の部分を組み上げる、という手法はよく使うんですか?

どの部分から作るかはその時々によるんですが、今作については結果として「anode」と「cathode」で明確に分かれましたね。「anode」はサビから作るという手法で作っていて、「cachode」の方は頭から作っていった曲が多いです。

ーー 録音時にマツヤマさんが「ベースはFOALSとかキタニタツヤのイメージで弾く」と言っていたのが印象に残っています。

弾いてる音もフレーズも全然違う(笑)。マツヤマでしかない。でも結果として面白いのでOKです。

ーー Bメロでは一瞬ネオソウル的なギターフレーズが出てくるところも面白いですね。

ギターのプリプロ時に二人でフレーズを練っていた時にやささくが元になるようなフレーズを弾いてくれて。当時は​​有賀教平さんが流行りはじめていたので「行け有賀教平!」なんてガヤを入れながら何度も弾いてもらい、このフレーズに辿り着きました。テクニカルであったり飛び道具的なエフェクターを用いたフレーズは僕よりやささくの方が秀でているなと思います。

ーー バンドイン時のドラムフレーズには実機のリヴァーブがかかっているのも面白いなと。

そう、ここはプラグインでなくLubLabにあった実機のゲートリヴァーブを使っています。80sっぽい、とまではいかないけれど楽曲のイメージを決定づける要素の一つになりました。


回転

ーー 「anode」までには無い、展開の多い曲ですね。

楽曲の原型は「瞳」と同時期にできたのですがそこからアレンジは進めず、「anode」からは意図的に外していた曲です。

「回転」という曲名はデモを上げる時に適当につけたもので特に意味はなかったんですが、フルの制作時にちょうど「輪るピングドラム」の劇場版が公開されて。曲名との符号を感じたのもあって、アレンジも歌詞もそこに引っ張られました。MVの回転テーブルもダジャレみたいなものですね。

ーー 楽曲の耽美的な空気感もバンドでは新境地です。

一昨年ぐらいにL’Arc〜en〜Cielがサブスク解禁されて。マツヤマとやささくがラルク好きだったので聴いてみたんですがray〜REALあたりの時期の曲にハマったんですよね。意識的にオマージュした部分もあったり、その辺りは影響を受けていると思います。

ーー 一方でスティールパンが入ったり、最後はノイジーになったりと展開の多い曲でもあります。

目まぐるしい構成はグルグルと移動しているという演出でもあります。スティールパンが入ることで一気に無国籍感が出て曲のコンセプトがグッと固まりました。強烈な違和感が出るのは分かっていた上で、バンドサウンドの上にどう乗せていくかという処理には試行錯誤した記憶があります。演奏してくれたのは通っているカレー屋さんの店長です。

ーー パッチワーク的な作曲手法は宅録ソロ時代を感じさせます。

今回のアルバムではその時のテンション感に最も近いのが「回転」だと思います。部分ごとに元ネタを設けていたりもして。例えばCメロはJorja Smithの「Be Honest」が念頭にあって、ソカ的なリズムがポップスに取り入れられている雰囲気を意識しています。とはいえメンバー全員そこへの理解は浅いので結果として当初のイメージとは違う感じになりました(笑)。


在処

ーー 「cathode」の中では最も早く録音された曲です。

マツヤマの披露宴で弾き語るために作曲して、別の友人の結婚式で流すために急いで録音しました。今作は結婚や葬式の曲が多いですね。歌詞は人と人との距離、みたいなところがモチーフになっています。

ーー 冒頭のドラムフレーズやギターソロのインダストリアルな音像もありながら、強い歌メロが残っているところは「anode」からの過渡期を感じさせます。

製作の時期的にもそうなるかなと。サビのコードは例えばOGRE YOU ASSHOLEの「動物的/人間的」やYogee New Wavesの「Climax Night」にもあるような定番進行のひとつなので、「それを使うなら良いメロディを乗せられないとダメだろう」という気持ちで作りました。定番進行とは言いつつも1番と2番のBメロではコードの構成音や流れを変えていて、自分の作家性が出ていると思います。

ーー 「繋ぎ止めても 間に合うのかを言葉で試してみたいよ」という節回しも含め、祈りのようだと思える箇所がこの曲に限らず歌詞にもサウンドにも散見されます。そういった感情を製作時に込めることはありますか?

なんというか、今作は全体的に祈りのムードが強いですよね。今回フィジカルにすることも相まって、どこかで「diode」にふらっと出会う人に長くリスナーであって欲しい感情が詰まっているので、そう言った部分の深層心理が無意識のうちに出てきているのかも。

まあ、祈りと言うよりは他責的ですよね。「俺にはどうにもできんが、どうかこうあってくれ!」みたいな内容の事ばかり歌ってる気がします。製作時は大体夜中で一人なので、歌詞を読むと真っ暗な部屋で机に向かってため息をついている自分が絵として浮かびますね。


ーー ここでインタールードの「eyes on you」を挟んで「瞳」に入ります。

今作では一番初めに録音したことやこの曲のみミックスが岩田さん(トリプルタイムスタジオ)なのもあって、A面→B面への切り替わり的な意味でもしっくりくる位置に来たなと思います。

ーー 今から振り返ってみてもバンドとしてのcolormalの名刺代わりの曲になったと思います。

作り始めた段階で「そうなるだろう」という意識はあって、楽器のフレージングも比較的シビアに指定したと思います。

ーー イントロ→Aメロのドラムのタムで組み上げていくフレーズは複雑ではないものの、それまでの自分の引き出しに無いものだったので擦り合わせに苦労しました。

その辺りはストレイテナーの「Long Way to Nowhere」やAerosmithの「Jaded」あたりがリファレンスですね。全楽器フレーズがそこまで難解ではないもののバンドで合わせるにあたっては難しい部類の曲になると思います。サビから作りはじめて、流れで生まれたギターリフの絡みが上手くできたので他のパートも絡みができるだけおいしくなるように編曲しています。サビの折り返しでリズムパターンが変わるところもキモかなと。

ーー この曲もコンセプトのひとつに「ループもの」があったかと思います。

そうですね。MVでは「ファイナルファンタジーVIII」のエンディングでヒロインが何度も振り返る、というシーンのオマージュをしてもらいました。輪るピングドラムもそうですがこれもざっくり言うと「ループするけどバッドエンドは変わらない」というものです。

ーー 楽曲製作時にもそのコンセプトは念頭にありましたか?

FF8をモチーフにした曲はいつか作りたい、と思っていて。作曲がよくできたのでそのモチーフを載せようと思って作詞しました。タイアップのつもりでやってます。

ーー 「変えられないバッドエンドへの諦観」はこれまでのcolormalの作詞にも通ずるところがあると思います。とはいえ今作では殊更ネガティブに悲観しているわけではなく、ある種俯瞰的な視点もあるのかな、と思いました。イエナガさん、あるいは曲中の主人公の「諦念」の温度感について教えてください。

正直なところ作詞において一貫性とかは意識していないので、全体を通して「諦め」みたいなものがあるのだとしたら、それは僕の性格上の問題なのかも知れません。前作の「merkmal」はソロでの作品でしたが、バンドを組めなかったんだという諦念めいたところが凄く大きかったと思いますし。ただ、その中で回転と瞳は曲中の主人公を自分以外の作品に設定したので俯瞰性はあるかもしれませんね。

「瞳」には「幸せとはなにか」という歌詞がありますが、僕にとっての幸せって予想される不幸をどれだけ避けられるかが大きいので。揉めないように、怒られないように、みたいな。


天国

ーー 今作の中では最後に作られた曲です。

他の曲が出揃ったところで「BPMが少し速めでサラッと聴ける曲があればいい」というのが念頭にあったんですが、全く速い曲を作るモードではなく(笑)。〆切が迫る中で半ば諦めながらギターをポロポロ弾いて作ったデモがそのまま採用された形です。

ーー 結果としてアルバムのこの位置にうまくハマっているなと思います。歌詞についてはどうでしょう。

「20代が書く死生観ってちょっと浅薄かもな〜」と思ってたんですが、去年友達が亡くなったり、祖母が余命を宣告される、という出来事が重なって。死は自分の年代にとっても日常とそこまで剥離したものではないなと。歌詞は仕事を休んで地元の祖母に会いに行って、その帰りの電車から見た景色を思い浮かべながら書きました。

この曲を作る前にアルバムの流れはイメージできていたんですが、終盤に幽霊がいて、天国があるというのは死のターンに入っていく感じが出ていて良いなと思います。

ーー サビの「My Iron Lung」感のあるギターも良いですね。

トレモロとピッチシフターを使って自分が思う天国っぽい質感を出しています。この曲だけはやささくが出産前後で忙しかったのでギターを全て僕が弾いています。

ーー この曲のMVは和歌山県の海が見える喫茶店「永和」で撮影しましたね。「瞳」「回転」のMVにも海のシーンがあり、「diode」のアートワークにも水平線が描かれています。これらに共通した「海」のモチーフは楽曲やアルバムのコンセプトとどう繋がりますか?

特に意図はなかったです。そういう観点で言えば、何かあるとすぐに海に行きたくなってしまう僕の習性が落とし込まれているかも知れませんね。「MV撮影のついでに、海辺に行かん?」みたいな感じです(笑)。

でも、今回3作のMVを撮影してくれた湊川萌は「瞳」から「天国」まで、水平線が繋がっているようで良いねって言ってくれたのは印象的でした。

アートワークをデザインしてくれたMasahiro Fujitaは僕らの活動初期からライブに通ってくれていたのもあって、細かい意図も汲んで製作してくれました。どこまで考えていたのかは分かりませんがMVとアートワークでの海の映し方が近しいあたりは不思議な一致を感じました。どこかの部分でコンセプトが並走しているんでしょうね。

Masahiro Fujita(https://twitter.com/mi_mo_13)

湊川 萌(https://twitter.com/msf_014)


優しい幽霊

ーー ライブ活動の初期から演奏されている曲ですね。弾き語りを元に当時のライブメンバーだった家永、うえまや(現Puff, ex. 絶景クジラ、 フライデイフライデー)、田井中の三人で大元のアレンジを組み上げています。

弾き語りでギターと同時にメロを歌いながら作る、という手法で作曲したのはこの曲が初めてでしたね。「merkmal」まではオケを作り込んだ後にカラオケのような形で歌メロを入れていました。

もともとはソロのcolormalとして2枚目を出すつもりだったので、「優しい幽霊」と「塔」はmerkmalの大きな怪獣、鎹と対になる要素としてセルフオマージュのような構成になっています。

自分のことを歌う曲ってあまり無いんですが「大きな怪獣」と「優しい幽霊」はパーソナルな曲だな、という自覚があります。

ーー 「優しい幽霊」は当時は「同世代の天才に向けて」という歌だったと思いますが5年経った今、楽曲の持つ意味/歌っている自分の感覚が変わってきたりはしますか?

天才だと思っていた人たちも色々な理由でいなくなったり、そもそも天才なんていないのかもって思うようにはなりましたね。大きなシーンがあって、そこに混ざるための「何か」が自分にはないと思っているところは変わってないかも。

音楽を続けていくだけで見えるものが増えている実感がここ数年は強くて。輪に混ざれず、夢に興味がなくなってでも続けてみることについて歌ってる側面が強くなってきたと思います。僕に影響を受けて音楽を始めたって人に出会うことも最近多くなってきて、尚更その側面は大きくなってきてますね。

ーー イントロのリードギターの質感にはこだわっていた気がします。

Valhalla Super Massiveという無料のプラグインを使いました。ディレイの一種で、反響した音の大きさやピッチを変えることができるんですが、残響音のピッチを揺らしてカーテンが揺れているような質感を出しています。スタジオに来てもらった友達と一緒に悩みながら作業しました。


ーー 元々宅録での2枚目を念頭に「鎹」と対になる設定で作られたという話がありましたが、今作で最後に収録されたことで「merkmal」との関係性も表れることになりました。

特に意識していませんでしたが結果そうなりましたね。「優しい幽霊」と同時期に作った曲ですが、こちらはデモの時点で今とほとんど変わらないアレンジが完成していました。メロディの元ネタはショパン「別れの曲」です。

ーー 「merkmal」でもクラシックからの引用があったと思うのですが、リスナーとしてのクラシックへの造詣についても聞いてみたいです。

特に熱心なクラシックリスナーというわけではないです。「merkmal」では『夢みる季節』の製作時にレーベルオーナーの前田と一緒にマーラーにハマっていて、楽章立った曲の製作に引用したんですが、それくらいです。

タイトルの「塔」は墓石のことを表していて。当時祖父が亡くなって、この時も生死について考えていたことが曲に反映されています。別れの曲でもあったのでショパンの引用はそこからの連想ですね。 

笹川真生が「生きてる方がかわいいよ」というアルバムの音源を送ってくれて、いたく感動したのもこの時期でした。それも「優しい幽霊」と「塔」の制作のきっかけのひとつです。

ーー 「優しい幽霊」「塔」はかつて宅録でのフル音源がsoundcloudに上がっていましたが、バンドで録音してみて印象が変わった部分はありますか。

当たり前ですがドラムとベースを生音で録音することで感覚が大きく変わりました。ミックスにおいてもギターを主体とせず、自然と全員の旨みが出るように組み立て直すようになりましたね。

ーー 今の回答は2ndアルバムとしての「diode」のまとめにもなりましたね。当然ですが「merkmal」がソロの音源として立っているだけに、今回は「バンドサウンドになる」というのがひとつの大きな変化になっています。

自分が想定していたフレーズとメンバーが持ってくるフレーズは当然違うので。それはそれで面白いと考えて良しとするか、あるいはもう少し自分の想定に近づけてもらうか。その判断の集積が今のcolormalを形作っている要素の一つだと思います。


ーー ここまで全曲について聴いてきましたが、2枚のEP→CDアルバムを作り終えての所感はいかがでしょうか。

一言で言うならバンドとしてアルバムを作るって大事だよね、と。録音にかけた期間はちょうど一年ぐらいなんですが、その中での自分達の変化もコンパイルされていると思うし、アルバムという言葉のごとく後になって振り返りたくなるものを残せてよかったなと思います。今後も各々の生活は大事にしつつ、年一とまでは言わずとも定点的にまとまった作品を作って、ライブをして、というサイクルを続けたいですね。

ーー 5年後10年後も聞き返せるようなものを、という話はよくしていましたね。

基本的にはそういうふうに作曲してきたつもりです。良くも悪くもその時のトレンドに左右されないような曲群が出揃っていて、何歳になっても演奏できるようなところも大事にできたかな、と。このアルバムを作ってみてようやくバンドのカラーみたいなものが見えてきたような気もします。

ーー 現時点で次作への展望はありますか。

「cathode」ではメンバーが思い思いのアプローチをする場が多くて、結果としてバンドの独自性が出せたと思うので今後はその色をより濃く出してみても面白いかな、と思いますね。あとはトばすような曲も作ってみたいな、と。

ーー トばすような、とは。

今作はどれがリード曲になってもおかしくないようなバランス、というかどの曲にも均等に力を注いでいるんですが、少し肩の力を抜いたような曲もあっていいかな、と。あとは今までのリスナーが肩透かしを喰らうような変な曲、変なコンセプトのアルバムとか。まあ色々慣れないことへのトライも続けていきたいなと思います。

元々「anode」、「cathode」というタイトルに深い意味はなかったんですが回路に電流を巡らせるという意味にも引っ掛けて、バンド活動のサイクルを回し続けたいですね。

ーー 気持ちの良い締めをありがとうございました。

ありがとうございました。